ファンダメンタル・インデックスの詳細解説と評価
今回のブログではファンダメンタル・インデックスの投資手法について考えてみたいと思います。時価総額加重平均とは異なる手法についての解説です。個人投資家は「広く分散された市場インデックスに投資をするべき」というのが一つの正解であり、金融の世界や投資の世界でも著名な書籍で言われているところです。
最も重要な話として「時価総額加重平均」での株価指数を持つことが、一番効率的でありこれを上回ることは出来ないと言われています。ただ、そんな「時価総額加重平均による市場インデックスファンド」にも欠点・弱点があり、それを克服しようとしている方法があります。
それが「ファンダメンタル・インデックス」であり、DGRW、DHS、DLNなどの人気のETFをリリースしているウィズダムツリー社が採用をしているインデックスの手法でもあります。
今回はこの「時価総額加重平均」と「ファンダメンタル・インデックス」の比較をしながら考えていきたいと思います!
「インデックスファンド」「時価総額加重平均」の解説
長期投資の最強の手法と言われています
Wikipediaからの抜粋で見てみると以下のように書いてあります。
時価総額加重平均型株価指数(じかそうがくかじゅうへいきんがたかぶかしすう)は株価指数の算出方式の一つ。 組入銘柄の時価総額合計を、基準となる一時点での時価総額合計で除算して求めるものである。 世界の多くの株価指数がこの方式を元に、浮動株の時価総額で計算した浮動株基準株価指数を採用している。
〜中略〜
現代ポートフォリオ理論および資本資産価格モデルによると、時価総額に比例させてポートフォリオを組むことが理想的な解であるということに基づいて、株価指数が時価総額で重み付けされている。
Wikipediaより
このように、その広く分散されたファンドを構成する各企業の時価総額の構成比に購入していくのが最も効率的であるとされています。よって、全米、全世界、先進国、、、などの広い範囲の企業の時価総額(=株価×株数)の構成比で買っていくのが最も効率的と言われています。
もちろん、上場企業の時価総額を個人の努力で集めるのはとてもじゃないけどできませんが、この決め方は投資に関する能力、センス、タイミングなど関係なく銘柄選定が決められるため、非常にわかりやすく、かつ、市場平均、市場の叡智の結果が反映されているものですね。
不思議なものです・・・。
インデックスファンドの強みと弱み
「ウォール街のランダム・ウォーカー」「敗者のゲーム」などなど読んでみると、「市場平均のインデックスがほぼ正解」と思っています。
“時価総額加重インデックスの理論的根拠で、ノーベル賞学者シャープ氏が創案した CAPM (資本資産価格モデル)によれば、全てのリスク資産を時価総額ウェイトで組入れた“市場ポ ートフォリオ”は平均-分散アプローチの観点から最も効率的であり、いかなる投資家もこれ を上回る運用はできない、とされている。 “
(年金運用):時価総額加重インデックスの問題点と新しい株式インデックス
日生基礎研究所 年金ストラテジー (Vol.129)March 2007
しかしながら、最強の時価総額加重平均も課題があります。その最も大きいのが、オーバーウェイトとアンダーウェイとの時の揺り戻しの時です。それは “「時価総額加重インデックスでは、割高な銘柄のウェイト が大きく、反対に割安な銘柄のウェイトが小さくなるため、割高・割安が修正される過程で、 インデックスのリターン低下が不可避」という構造的な問題がある“ というものです。
要するにバブルの時に株価が上がりすぎて、落ちるのわかっていたらそこで打って、下落をしてしまっている株を買っておけば、インデックスの平均に回帰する時に効率が良くなるというものです。時価総額加重平均は、そのまま下落したり戻ってしまったりしまうので、その部分が非効率だと言われています。
ファンダメンタル・インデックスの特徴
新たな指数による戦略はどのようなものか?
株価に依存したものではなく、”ファンダメンタルな企業規模“でウェイト付けして、こういった問題を解決する試みがあります。このファンダメンタル・インデックスの概要は以下のようなものです。
- 価格情報ではなく財務データなどのファンダメンタル情報から算出
- 行動ファイナンスなどにおいて指摘されている市場価格に現れる意思決定のバイアスの影響を受けにくい
- 時価加重インデックスと比較して優れた特性を有する可能性
このような手法で指数における購入金額の割合を決定することにより、より良いパフォーマンスを得ようという試みです。多くの研究機関では過去データから実証実験などを行っており、他の研究結果でも “ある期間では” 高いパフォーマンスを発揮しているという論文多数であると言われています。もちろん「絶対に勝てる」わけではないないので。
ただ、以下のように実証実験ではTOPIXでは以下のようにファンダメンタルインデックスの合成指数がパフォーマンスが高くなっています。
ウィズダムツリー社による指数運用のための提携
ウィズダムツリー社とメロン社の提携
ファンダメンタル・インデックスファンドの手法に多くのファンドを切り替える決断をしたのが、ウィズアムツリー社です。DGRWや多くのファンドを運営している大手の企業です。こちらが、以下のようなプレスリリースを行いました。
ウィズダムツリー社は「ファンダメンタル加重平均」のノウハウの運用について老舗の金融会社である「The Bank of New York Mellon」傘下である「Mellon Investments Corporation」と提携(2008年7月30日)をしたと発表しています。
当時のプレスリリース
DeepL機械翻訳の抜粋
ウィズダムツリーとBNYメロンアセットマネジメントの投資ブティックであるメロンキャピタルマネジメント株式会社は本日、ウィズダムツリーのファンダメンタル・インデックス加重手法に基づく機関投資家の口座運用で協力することを発表しました。
メロンキャピタルは、これらの口座の独占的なライセンシーとなり、この手法を用いた唯一の投資顧問として機能することになります。
メロンキャピタルのCEOであるチャーリー・ジャックリンは、「ファンダメンタルズ加重インデックスを追加することで、投資家に従来の時価総額インデックスに代わる選択肢を提供できることを嬉しく思います」と述べています。
〜以下、省略〜
このような形で、ファンダメンタルインデックスの組成や運用のノウハウがあるMellon Investments Corporationのノウハウを活用して、ウィズダムツリーしゃは運営を開始したようです。
ウィズダムツリー社の運用チームのメロン社の担当者
Dividend.com が見やすいのですが「Managers」のメニューから運用チームのお名前を検索すると、皆さんがMellon Investments の方のようです。DGRWのファンドの紹介文にも”It is co-managed by Mellon Investments Corporation and WisdomTree Asset Management, Inc.”共同での運用であることが明記されています。
そして、上記で書かれている名前の方々を探すと以下の方々が我らのDGRWを運用してくれているようですね。なんだか、みなさん優秀そうですね。ていうか、優秀なのか😀 DGRWだけでなく多数のファンドがこのチームの手腕にかかっているようです。
ファンダメンタルインデックスの評価は?
さて投資業界の著名人はどのように評価しているのでしょうか?見てみましょう。以下のコメントは”投信資料館(www.toushin.com)”からの引用となります。
ウィリアム・シャープ(ノーベル経済学賞受賞者)
「時価総額ではない方法で株式市場を加重したスキームが時価総額加重インデックスを打ち負かすと考える人がいるというのは驚くべきことである・・・新しいパラダイムは現れては消える。市場が負けることに賭けること(そして大きな金額をそのために支出すること)は、きわめて重い負担となるであろう」
ジョン・ボーグル(バンガード・インベストメンツ創設者)
ファンダメンタル・インデックス運用は、―私がみてきたほかの新しいパラダイムとは異なり―機能するかもしれないし、機能しないかもしれない。しかし、標準的なインデックスファンドを大きく上回る冨の蓄積を約束するパラダイムの甘言に惑わされてはいけない。
19世紀はじめの軍事評論家でありプロイセンの将軍であったカール・ヴァン・クラウゼヴィッツの警告「よい計画の最大の的は、完璧な計画という夢である」を忘れてはいけない。夢を退け、常識を引き寄せ、標準的なインデックスファンドが示す、よい計画を貫くべき
ジェレミー・シーゲル博士
例えば、配当牽引型のファンダメンタル・モデルの提唱者と言われるジェレミー・シーゲル博士(ペンシルベニア大学大学院教授、ウィズダム・ツリー・インベストメンツの上級投資戦略アドバイザー)は、ファンダメンタル加重平均ポートフォリオのメリットは、「配当や利益など企業価値を表す指標の上昇を伴わない株価の急騰、すなわちバブルを避けることにある」と言っています。
また、「ファンダメンタル加重平均で指数化されたポートフォリオの開発は、時価総額加重平均指数の欠点に対する解決策を提供するかもしれない。これは、株価が効率的市場仮説よりもノイズのある市場仮説に基づいて行動する場合に、特にそうなるだろう。
間違った銘柄を延々と探し求める投資家が存在するなら、実際に市場に勝つことは可能かもしれない」と、その著書「株式投資」の中で述べています。
それぞれのポジショントークがあり面白いですね(笑)。シャープさんは「市場インデックス、時価総額加重平均」でノーベル経済学賞をもらったので、当然そう言いますね。ジェレミー・シーゲルさんは、ご自身がウィズダムツリーのアドバイザーでもあるので、それなりに評価しているようです。
何事も新たな手法というのは評価されたり批判されたりしているようですね。🐸は実際にDGRWに投資もしていてパフォーマンスも良いですし、考え方も好きなので、結構、肯定的な見方をしています。チャレンジ、チャレンジで。
実際にETFで二つの手法を比較した結果
Vanguard+HDVとWisdomTree+PRFで比較です。
以下のような比較軸を作ってみました。日本でも人気なVanguard勢+HDVとWisdomTree+PRFでやってみます。EPSとPRFは日本では買えなそうですが、それぞれSP500やバリューファンドに近いですね。HDVだけは時価総額加重平均ではなく、配当ウェイトになっています!
上記の銘柄を均等に持ってみたらどうなるでしょうか?「Portfolio Visualizer」でポートフォリオを組んで比較を行ってみました。以下のように3つのポートフォリオで登録をしてみました。
パフォーマンスを比較!ほぼ一緒?
パフォーマンスを比較してみると以下のようになりました。やはりVOOだけの方が近年だとパフォーマンスが良いですね。ポートフォリオ間の比較だと、WisdomTree連合のポートフォリオがパフォーマンスを上回っています。時期的なものもありますが、少なくともファンダメンタル指数のインデックスでもこの10年は十分にパフォーマンスを発揮していると考えています。
そして各ファンドのポートフォリをの状況を見てみましょう。各ポートフォリオとも下落への耐性があり、年平均成長が9%を超え、Sharpe Ratioも高いということです。このようにしてみると、ファンドの実力も十分であり、銘柄選定の能力も高いという感じだと思います。
各銘柄ごとに指数をみるとどうなっている?
さて各ファンドのパフォーマンスを見てみると、我らがDGRWが非常に高いパフォーマンスを発揮してくれています。年平均も高く、リスクも抑えられ、増配も高く、Shap Ratioも高い。ちょっと、この2年間の市場の荒れっぷりのせいでVOOがパフォーマンスが悪いというのもあると思いますが。それにしたって十分なパフォーマンスです。
こうみると、高配当銘柄の代名詞であるVYMが思ったほどではないなって思うかもしれませんが、連続増配12年というのは実はものすごいことだと思います。大型、400社以上に分散、12年連続増配というのは物凄い安定感ですね。
各ETFのパフォーマンス
最近の下落相場に強かったDGRWが勝っていますが、2020年以降の上昇相場ではVOOがかなり強いですね。この少しバブル的な状態で株価が一気に伸びるのが時価総額加重平均の強みかもしれません。全体的に「この10年を見た感じでは米国強い」です。QQQ入れたら比較にならない成長(278.71%)でしたので、入れてません。VTやACWIの全世界のパフォーマンスはやっぱり気になってしまいますね。
まとめ
今回はDGRWになぜ投資をするのかの基本となる、「ファンダメンタル・インデックス指数」について説明しました。DGRWは毎月分配出し手数料が、、、という話もありますが、基本的に最も大きなところはこのような指数を使っているというのも魅力ですね。
もちろん、現代の金融理論においては、「市場インデックス」+「時価総額加重平均」ですが、そのほかの方法も試してみるのもいいですね。
今の所、各パフォーマンスを見てみると、決して悪くないですし、下落には強く、長期的に見ても決して悪くないように見えます。今後も基本的にはeMAXIS Slim S&P500 や eMAXIS Slim オールカントリーに投資をしながらも、こういったファンドも保有してみて投資経験を蓄積していきたいなと思います。
今回の動画は以下にありますので、是非、ご参照ください!!