この本は、単に「勉強しましょう」という話ではなく、もっと深い意味を持っています。学ばない人は、物事を他人のせいにします。政治家や官僚を悪く言う人はよくいますが、政治は国民の写し鏡です。福沢は西洋のことわざとして「愚民の上に苛(から)き政府あり」を紹介し、良い国民の上にこそ良い政府がある、と書いています。政治家や官僚をただ悪く言うのは、空に向かって唾を吐くようなもので、自分の無知を言っているに過ぎない。私はそう読みました。そして、この負のループを抜け出すには「学ぶ」しかない、というのがこの本の核心だと思います。
実学を学び、暮らしに役立つ知識を得ることも大切です。投資も同じで、研究者のレベルを目指す必要はありません。自分の資産をきちんと運用できるだけの、実務的な知識を身につけることが大事なのだと思います。国民と政府は一種の約束で結ばれていて、国民は法を守り、政府は法をつくって国民を守る、という関係です。
いちばん印象に残ったのは、「怨望(えんぼう)」こそが最大の害だという話です。他人をうらやみ、足を引っ張る心。成功した人をうらやんで引きずり下ろし、上の人を見下すことで自分の存在を確かめようとする。のちにニーチェが「奴隷道徳」と呼んだ考え方に、とても近いものを感じました。しかも福沢がこれを書いたのは、ニーチェより10年以上も前です。洋の東西を問わず、人間の心の弱さは同じなのだと思わされます。『バカと無知』の「正義でたたく快感」の話ともつながります。
150年前の本ですが、日本人の必読書と言ってよいのではないでしょうか。
| 書名 | 現代語訳 学問のすすめ(ちくま新書) |
|---|---|
| 著者 | 福澤諭吉 |
| 訳 | 齋藤孝 |
| 出版社 | 筑摩書房 |
| 発行 | 2009年2月 |
| 原書 | 学問のすゝめ(1872〜1876年、全17編) |
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